初めての方は、このブログについて、をご覧ください。金融業界で働いています。毎日の気になった情報・ニュース・考えを載せていきます。友人・知人の皆さん、コメントの際にはハンドルネームで呼んでくださいー。


by a_villager

カテゴリ:投資( 15 )


流血の日曜日と言われるような金融業界の再編が続いているが、直接的な関係はない(と願いたい)けど、リーマン・ブラザーズの社員がオフィスからコピー用紙の段ボールに荷物を入れて持ち出しているのをTVで見ていると、とても心穏やかになれない。

世界中、25000人の社員。その殆どが仕事を失うのかな。。。その大部分が一時期まで超高給取りで将来も非常に明るいように見えただけに、この1年ちょっとの間の市場の激変ぶりには言葉を失うばかり。明日はわが身、ということを実感します。。。。

この頃、投資心理学系の本をよく読むようにしている。今日も下の2冊を買って読んでいる。

規律とトレーダー 相場心理分析入門
マーク・ダグラス / / パンローリング
ISBN : 4775970801
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トレーダーの心理学―トレーディングコーチが伝授する達人への道 (ウィザードブックシリーズ)
アリ キエフ / / パンローリング
ISBN : 4775970739
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今の仕事をしていく上で1位か2位に重要なことは、恐らくは心の平安を保つことだろう。自分を、自分の判断を信じきれるか、自分の間違いを認めて次に進めるか。究極のところ、学歴も、身分も、年齢も、経験も、パフォーマンスの前には無意味の世界。そのパフォーマンスも運によって大きくぶれることがある。長期的に正しいことも、短期的には間違っていることもある。そういう状況になったときに、自分の判断を信じきれるか、間違いを認めることができるか。

どんなにテクノロジーが発達しても、どんなに多くの情報を入手できても、それらを利用したり、認知・処理し、判断に繋げていくのは人間で、それらの行動を支配するのは人間の心理。

自分から非常に遠い今の金融市場の出来事でも、これだけの心理的なストレスになっている今の状況じゃ、将来は大変だなぁ。仕事での経験、心理学の勉強、後は生活環境の改善をしていって、自分の心理状況をコントロールしていかないと。
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by a_villager | 2008-09-15 22:00 | 投資
キャピタル 驚異の資産運用会社
チャールズ・エリス / / 日本経済新聞社
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世界最大級の投信アメリカン・ファンドを運用するキャピタル・グループに関する本。以下、チェックした箇所を。。。

p.103
アルフレッド・チャンドラーの『企業の戦略と組織』について

企業の戦略がその組織を決めているのではなく、長期的にはその反対で、企業の組織がその戦略を決定しているのである。

ある特定の戦略によって成果が明らかに出てくると、企業はその方向へより効率的な組織化を進め、短期的には業績は一層拡大する。その結果、徐々にそういう成功体験に基づく発想、仕事のやり方だけが評価され、そうした価値観を共有し、したがって共通の欠点を持つ人々だけが権力を握るようになる。彼らにとっての優先課題は、慣れた仕事のやり方を仲間と一緒に続けることであり、組織は必然的に硬直化していく。

p.123
これまでの企業買収の歴史を見ると、一般的にその成果はあまり成功とは言えない。結果的に買収価格が高すぎたり、当初期待していた戦略シナジーが生まれなかったり、というケースは枚挙に暇がない。対象企業の中身を正確に知っているのは買い手よりも売り手であり、その売り手から見ればいらない企業なのだ。失敗したM&Aは、どちらかというと言うと情緒的に決められた場合が多いようだ。特に資産運用におけるM&Aha失敗例が多い。

p.139
年金の位置づけを、コストセンターからプロフィットセンターへと変えること。

年金の運用利回りが向上すれば、会社の拠出額の削減を通じて収益改善に結びつく。

p.197
キャピタルの採用面接について。

「私達は『C』で始まる特性を求めます。common sense、curiosity、caution without being stubborn creativity, confidence without arrogance。」

p.203
キャピタルが求めるのは、自分自身のことを注意深く分析できて、前向きに捉えられる人材だ。なぜなら、人は自分に対しても、同僚に対しても、顧客に対しても、明らかな間違いを犯すことがある。その時、自信のない人は間違いを自分で
改められず、それを繰り返す傾向がある。己をよく知り、前向きに対処できる人でなければ、運用業務には向かないだろう。

p.225
激しい下げ相場に遭遇すると、その人が過去に何を学んできたかが一目瞭然となる。そうした時に、長期的な視野を失わずにいるのは誰か、周囲の人への配慮を絶やさないのは誰か、じっくり観察している。

p.247
経済見通しと株式市場の動向に合理的な関係があるといわれるが、40年以上のポートフォリオ運用を通じて、そんな関係を見たこともない

p.250
もしその価格で全株取得する気持ちが無いのなら、10万株でも、いや100株でも買うべきではない。

p.258
アナリストの仕事の1つの側面は、その企業の実績が予想通りなのか、予想と異なる場合には、なぜ異なるのかを明確に理解して説明することである。

p.270
世の中には、自分は絶対にミスを犯さないと思っている人種もいるが、そうした人は運用には向かない。

投資には失敗は避けられず、しかもその失敗は常に誰の目にも明らかになる。だからそれを乗り越えられる気持ちの強さが絶対に必要だ。
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by a_villager | 2008-09-08 22:58 | 投資

昨日のNew York TimesのDealbookに投資銀行、いわゆるセルサイドのリサーチについて面白い記事が載っていた。



Analyzing Wall Street’s Research
August 11, 2008, New York Times Dealbook


シリコンバレーの有名企業の新規上場をこなしてきた投資銀行家Frank P. Quattroneが今の投資銀行のリサーチ部門のリサーチの質の低下についてコメントしている。

その質の低下の原因として、ITバブルの後にできた規制によって投資銀行部門とリサーチ部門とのコミュニケーションを殆ど絶たれたこと、またリサーチ部門の収益ベースを投資銀行部門から分離させて、独立ベースか、もしくはトレーディング部門と合わせたことを挙げている。

その結果として、リサーチ・アナリストが投資銀行部門を通じて得られてきた知識、企業への調査のアクセスが絶たれたり、アナリストの高給に見合うだけの収益がリサーチ部門から得られなくなって、待遇が下がったり、リサーチ部門の縮小・閉鎖を招いた。

これによって、優秀な(+高給取りの)リサーチ・アナリスト、またはこれからリサーチ・アナリストを目指す人は投資会社、ヘッジファンド、PEファンドと言った、バイサイドに流れてしまった。それによって、リサーチの質が落ちてしまった。

また、トレーディング部門と収益ベースを合わせられてしまったリサーチ部門は、トレーディング、ブローカレッジで収益が得られる上場大企業へのリサーチばかりを行うようになって、将来の発展が見込めるはずの小規模のIT企業の調査を行うアナリストがいなくなり、そのような投資機会に投資家のお金が流れなくなったことを指摘している。

リサーチ・アナリストの仕事は、機関投資家から見れば、単純な買い・売りの推薦ではなく、その企業、産業の性質・動向を分析することにあって、それを頼りに投資判断をしているから、今のアナリストの質の低下、フォーカスの偏りは深刻な問題だと。

リサーチの独立性を重要視しすぎたために、このような問題が起きたと指摘して、これからは徐々にその規制を緩める方向に持っていかないといけないと。リサーチの独立性と、質と、そのトレードオフ(2つは必ずしも相反するものじゃないけど)のどこで折り合いをつけるか。

“I am not denying that there is the potential for conflict ― always has been, always will be. I’m just questioning the best means of managing the conflict,” he told me after his presentation. “If the principles of what constitutes ethical and unethical behavior are spelled out clearly, such as disclosing the firms’ investment banking relationships and ownership interests in the covered security, as well as not publishing favorable reports on companies in which you do not believe ― and violators are punished ― the conflicts will be managed.”


何が何でも規制でがんじがらめにするよりかは、原則をハッキリして、それから大きく外れたら厳しく罰する方向に持って行くべきだと。。。でも、こういう原則重視の規制って、アメリカよりイギリスの方に長い歴史があって、アメリカはもっと法律で1行1行明記しているやり方だから、どこまで実現できるんでしょうかね、と、資格試験で勉強したイギリスはPrinciple-based regulationっていうところで少し知ったかぶりをw 実際のところ、Principle-based と Rule-based はどう違うんでしょうかね。。。と疑問に思ったけど、法律がらみの勉強は嫌いだから、調べる気も起きず。。。
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by a_villager | 2008-08-13 00:53 | 投資

Fallen Angel


直訳すると堕天使だけど、金融の世界ではかつては高格付けにあったけど、今では経営難から低格付けに落ちてしまった社債のことを指す場合がある。GMとかFordとかが典型的な例。でも今日のは、かつては持てはやされて崇拝されていた有名投資家の話。

水曜日に控える資格試験の勉強の合間に気分転換に興味ある記事を読んでいた。(これで気分転換になるなんて病んでる、っていう突っ込みは置いといて)



大手投資会社Legg Masonのポートフォリオ・マネージャー、Bill Millerはかつて2005年まで15年連続でS&P500指数を上回る運用成績をたたき出したが、この金融危機の煽りを受けて、過去の運用成績を吹き飛ばすほどの損失を出して、今窮地に陥っているという。

Humbler, After a Streak of Magic
Published: May 11, 2008, New York Times


Is Bill Miller’s Star Waning?
July 24, 2008, 7:48 am, New York Times



そのパフォーマンスの低迷の原因としては、金融危機の規模の大きさ・深刻さを読み間違えて、表面上安くなった金融・住宅関連の株に大きな投資をしたことが挙げらている。また、ファンド規模も大きくなりすぎて、機敏な調整がしにくくなり、ファンドの大きさに見合う投資先を見つけるのが難しくなったことも考えられると。

その結果、2008年の7月までのパフォーマンスはマイナス30.86%と、S&P500 Indexのマイナス13.20%を大きく下回った。さらに衝撃的なのが、2008年5月から2ヶ月間の下げで過去10年に及ぶS&Pに勝ってきた貯金を全部吹き飛ばすほどの損失を出したと。それによって、5月には同種ファンドの中で37位にあった運用成績が56位まで落ちてしまった。対インデックス、対同種ファンド、など相対評価が非常に重要な運用業界で、この下げは非常に厳しい。。。

上にあげた1つ目のNYTのインタビューで、興味深い点を2つほど見つけたので以下に転載。

1つ目。

For example, Legg Mason began buying Countrywide in 2004, when the stock was in the $20s. “We said: O.K., the Fed is raising interest rates. That is bad for housing,” he recalled. “We studied housing stocks in other countries. We looked at the U.K. experience, the Scandinavian experience, places where governments had raised interest rates. And the answer was that stocks underperformed for about a year and then outperformed.”

What Mr. Miller missed, he acknowledges, was that lending standards had become much more relaxed in the United States than they were in other countries. As for Bear Stearns, he views its demise as a classic run on the bank. While some investors consider Wall Street firms to be inscrutable black boxes, Mr. Miller takes a wider view.

“To a certain extent almost every company is a black box,” he says. “How many people know what is going on inside General Electric? As of March 14, Jeffrey Immelt did not even know what was going on,” he adds, referring to a Webcast in which Mr. Immelt, G.E.’s chief executive, was optimistic about the company’s performance a month before it reported disappointing quarterly earnings.


表面上からは過去と同じように見える企業体も、今や金融技術の進化・普及によって全く異質なものになっている。色んなアグレッシブな会計手法、数字に表れない質的な劣化、デリバティブの適用によって、企業を理解・分析するのが難しくなった。企業の経営者でさえ、企業の中で何が起こっているのか、それが結果的に会計上の数字としてどのように現れるのか、理解するのが難しくなった。

2つ目。

But on occasion, Mr. Miller has been slow to recognize that management problems may trump valuations. “That tends to be a weakness of mine,” he concedes. “I tend to believe the numbers and I tend to give management the benefit of the doubt.”


企業の経営陣によって作られた会計上の数字がどこまで信じられるか。経営陣の善意にどこまで頼っていいのか。偶然にも、僕が数週間前に受けた授業、読んだ本と重なる部分があって驚いた。

個人的には、Bill Millerにはここで踏ん張って挽回してほしい。今までのスタイルを変えたり、引退したりするのは見たくないなー。まだ60歳前だし、まだまだファンドを立て直す時間もエネルギーもあると思うから。山あり谷ありの商売だし、谷底から這い上がってくるのを将来の手本として見せて欲しい。
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by a_villager | 2008-08-10 03:36 | 投資

20兆ドル市場


つまらない試験勉強の合間に、債券投資会社PIMCOのボス、Bill Grossの8月のInvestment Outlookを読んだ。ユーモアが効いていて、複雑な出来事を簡潔にまとめていて、読んでいてとても面白い。




Investment Outlook
Bill Gross | August 2008
Mooooooo!


タイトルの”も~~~!”っていうのは、金融市場・現代経済の血液ともいえる信用(Credit)をミルクと例えて、それを生み出す牛が困った状況にあるっていうのを言っているんだって。

今の金融危機の根幹にあるのが、アメリカの住宅価格の下落だそうな。それによって、その住宅から得るお金に裏づけされた色んな資産の価格下落が止まらず、信用を作り出す銀行の資本が食われていると。

アメリカの住宅市場は全体で20兆ドル超。そのうちの半分、10兆ドル分がモーゲージなどによってファイナンスされている。ちなみに、今ホットなフレディマックとファニーメイは5兆ドルのモーゲージを保有、もしくは保証している。それでPIMCOの資産によると、20兆ドルのうちの5兆ドル分のモーゲージが危険資産に分類されていて、この住宅バブル崩壊が終わるころには最終的に1兆ドル分が吹き飛ぶと。

問題は、その1兆ドル分もの資産が金融機関(大部分は金融機関が保有しているから)の貸借対照表の資産から無くなるなら、その一方で資本の方でその1兆ドルの損失を埋めなきゃいけない。。。でも、1兆ドルもの資本を集めるのって簡単じゃないよね。。。と。

もし住宅関連で損を出した分を資本のほうで集められないとすると、他の資産を売って利益を実現させるか、または新しい貸し出し、つまり信用を作り出すのを止めるかしかない。そんなことをしたら、住宅価格の下落に更に拍車がかかるし、経済全体が止まってしまう。

住宅価格の下落が止まれば、そこが見えて資産の劣化も止まって、新しい資本も金融機関に入りやすいのだが、それが難しいのよと。個人的に爆笑したのが以下の部分(ホテルで1人、こんなもん読んで爆笑するなんて病んでるとかいうのは置いて解いてw)

Make no mistake, the current conundrum that must be solved is: how to make the price of 120 million U.S. barns stop going down in price and then to make them go up again. That, however, is easier said than done. One of the wisest men I know has this serious but admittedly impractical solution: have the government buy one million new/unoccupied homes, blow them up, and then start all over again. Absent that, he’s not quite sure what to do, nor am I, with the exception of the next paragraph’s proposal.


アメリカ政府が税金で余った100万の住宅を買って爆破すればいいんジャン!!確かに!!過剰供給がなくなって価格が止まるわね。金融機関の劣化で株式市場で消滅するお金に比べたら、そっちのプランのコストは微々たるものじゃない?(笑

ということで、アメリカの住宅価格の下落の底が見えないかぎり、投資家はリスクテイクに対して慎重な姿勢を崩しちゃいかんらしい。とほほ。


ちなみに、僕はロンドンでの食事においてはリスクテイクはするものではないという確信を強めています。肉だと思って買ったら、へんてこりんな植物性の合成物だったとか。もう、本当に勘弁してほしい。1日の摂取カロリーが日本での半分以下の日々が続いてる。。。

研修センターにあるFinancial Timesを毎日読んでたら、やっぱり日本でも欲しいなと思うようになった。FTはイギリスでも特段に高いらしい。£2ですって。そりゃ、日本で一部800円(だっけ)っていう凄い値段がつくわね。でも、内容は、特に国際経済、コラム、投稿の充実振りに関しては、日経はもちろん、WSJよりも全然いい。
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by a_villager | 2008-08-07 07:57 | 投資

お金の集まるところ


今日のFinancial Timesに面白い記事が載っていた。

London lures family offices of ultra-rich
National News, Wealth Management, Aug 5 2008, Financial Times


ここ数年、ロンドンに超富裕層が増えるにつれて、彼らのお金だけを運用するオフィスが増えていると。幾つかの数字を挙げると。。。

・400以上の超富裕家族が自分たち専属に運用するオフィスがロンドンにある

・専属の運用オフィスの費用をカバーするためには、最低でも£1億(日本円で230億円ですかね)の流動資産が必要。現実的には£1億5000万から£2億は欲しいかなと。

・この過去3年の間、年率15%のペースでロンドンにそういう専属の運用オフィスが設立されてきた。

・イギリスに住んでいて、£5000万以上の流動資産を持っている人は1700人。

・イギリスにある、そういうオフィスが対象とできるスーパー・リッチな家族の資産は全体で£4600億。

スイスにあるプライベート・バンクと同等で、そういうオフィスは、資産の運用から税金、法律、さらには子供の教育の面倒まで見てくれると。イギリスにいる家族の他にも、この頃はロシアのスーパー・リッチも、ロンドンにある金融市場の充実振り、税制上のメリットから、ロンドンにお金を映して面倒を見てもらっているとか。

そういう資産の運用に対して、この頃は一流の投資銀行(Goldman SachsやJP Morgan)からプロを引っ張ってくるトレンドがあるとか。


東京じゃ、そういう話は聞かないですね。。。中国のスーパー・リッチが東京にとか。。。そういう人はシンガポールに行くんでしょうね。。。市場が整備されているから、語学等の面で快適だから、金融機関が集まって取引が活発になって、だからそういうところにお金が集まる。プラスのフィード・バックがかかっているから、一度、その流れに取り残されると挽回は難しいのかもしれないね。


イギリスの金融市場関連の法律・行動規範について授業を聞いて、問題を解いて、本当にMentally Damagingな日々が続いています。何回でイヤらしい長々とした英文を読んでいると頭が痛くなってくる。答合わせして、間違いが延々と続いていたりすると本当に泣きたくなってくる。試験だし、研修も仕事の一部で給料も貰っているから文句を言うべきではないんだけど、ロンドンに監禁されて、ひたすら憶えるだけの試験勉強をするのは精神的に疲れます。。。

それにプラスして、£高のお陰で食欲がガクリと落ちて、不本意なダイエットにつながってますorz 今日、腕時計がぐるんぐるんと手首を回るようになった。なんか、情けない。。。困った。。。
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by a_villager | 2008-08-06 05:57 | 投資

クリエイティビティ


今日、8月4日のWall Street Journalに企業会計に関する大きな記事が載っていた。気が付いたら企業会計が僕の大好物の記事の1つになってた(笑

Companies Tap Pension Plans
To Fund Executive Benefits
August 4, 2008; Page A1 Wall Street Journal


記事の内容はかなり難しいけど、ざっと読んで自分の理解している限りでは、企業が税制上有利な従業員の年金債務の中に、そうではない経営陣の年金債務を混ぜて、それによって税金の支払を減らしていたというもの。

企業の抱える一般従業員の年金債務への積み立ては法人税を計算するときに控除されるけど、経営陣の年金債務はそれに対する資産の積み立てをしない上に法人税の控除にはあたらない。企業がその債務を一般従業員の年金債務に混ぜれば、経営陣年金債務にある積み立て不足分だけ、企業の債務が増えて、それによって法人税控除の枠が増えて、法人税の支払が減って、利益も、キャッシュも増やすことが出来る。紙の上でチョチョット数字を動かすだけで、数十、数百億もの利益をを作り出すことが出来る。

でも、IRS(内国税務局)が主張するには、一般従業員と経営陣の年金債務を混ぜるなら、その2つの年金の額に大きな差がないことが前提だけど、実際にはそうでもない。だから、この操作が適切かどうか調べているとか。

問題は企業の税金支払額が減るだけに留まらない。資産の積み立てのない経営陣の年金債務を積み立てのある従業員のそれに入れると、当然のことながら、全体の年金債務の資産積み立て率は減ることになる。それによって、将来的に年金資産の運用成績が下がったときに、企業が追加の積み立てを強いられる場合が生じる。

それともう1つ。もし企業が破産したときには、従業員の年金の積み立て率は、経営陣の年金債務が合わさったことによって下がるので、結果として従業員の年金は、その合算操作をしなかったときよりも減ってしまう。本来、税制上の特典がないために積み立てをする意図がなかった経営陣の年金が、従業員の年金の犠牲によって部分的に救われる事態が発生してしまう。

本当に会計は面白いですね。色んな意味で。企業の利益も、マジメに働いている従業員に対する報酬も、企業にお金を預けている投資家の資産も、こんなに簡単に操作されちゃうんだもん。世の中、クリエイティビティを発揮できる人が多いこと。

ますます、企業会計、特にCreative Accountingに興味を持っちゃうね。


イギリスの規制を1日中、授業で聞かされて気分が悪くなった。ロンドン3週間目、日本を離れてから4週間目、つまらない資格勉強(特に規制・法律)もあって、本格的にホームシック。。。とほほ。
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by a_villager | 2008-08-05 05:36 | 投資

The Predators' Ball: The Inside Story of Drexel Burnham and the Rise of the Junk Bond Raiders
Connie Bruck / / Penguin USA (P)
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今、研修・勉強の合間にこの本を読んでいるが、ふと下の台詞が頭に浮かんできた。マイケル・ダグラス演じる、企業乗っ取りやゴードン・ゲッコーが乗っ取り先の企業であるテルダー製紙の株主総会で放った演説。

Gordon Gekko: Address to Teldar Paper Stockholders

The point is, ladies and gentleman, that greed -- for lack of a better word -- is good.

Greed is right.

Greed works.

Greed clarifies, cuts through, and captures the essence of the evolutionary spirit.

Greed, in all of its forms -- greed for life, for money, for love, knowledge -- has marked the upward surge of mankind.

And greed -- you mark my words -- will not only save Teldar Paper, but that other malfunctioning corporation called the USA.


賛否はあるけど、個人的にはこれにすごく賛成。企業経営者に規律・活性を与えるという役割を企業乗っ取り屋が担っていると思うし、乗っ取られないように、企業が絶えず努力し改革していってこそ、経済が活性化すると思う。(話は変わるけど、今の日本の何が何でも防衛策という企業の姿勢は、この先の企業、日本経済に大きなツケを残すことになると思う)

この本、the predators' ball (直訳すると、略奪者たちのパーティ)でも、低格付け債券、ジャンク・ボンドの市場を作り上げ、それを企業買収に利用できるようにしたマイケル・ミルケンの功績として、アメリカの企業に買収されるという恐怖を与えて、企業経営者が改革をする動機付けを作ったということを述べている(もちろん、別の部分で悪い部分(インサイダー取引とか)はあったけれど)

このノンフィクションに書いてるミルケンの人となりがどれだけ事実なのかはわからないけど、純粋に、今まで投資資金を調達する術を持たなかった企業、格付け会社から格付けという形で差別されていた企業に対して新しい資金調達手段を提供をしたかった、という考えに突き動かされて、あれほどの巨大な市場を作り出し、アメリカ企業に大きな影響を与えたということに対してはある種の感動を覚える。

何事も、成功するためには情熱(金銭欲以上に強いもの)が必要だということなんでしょうか。


ホテルから少し歩いたところにとても美味しいタイ料理屋を発見した。店の主人もとてもナイスなおじさんだし、雰囲気も、味もとてもいい。ちょっと高いけど、これから1ヶ月足繁く通うことになりそう。美味しいご飯が食べられるとわかった途端、これからの毎日が少し楽しくなった。
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by a_villager | 2008-07-30 06:12 | 投資

The Number

The Number
Alex Berenson / / Simon & Schuster Ltd
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投資・金融の世界がどれほどまでに一つの数字、EPS(一株あたり純利益)に危険なまでに過剰に注目しているか、今までの歴史の中で投資家を取り巻く環境がどれほどまでに投資家にとって好ましくないものだったか、過去の会計操作にはどういうケースがあったのかを書いている。

先週に授業を受けて、その昼休みに立ち寄った本屋で買って今日読んだけど(体調が回復しておらず遠出ができなかった;)、とても面白かった。この内容で£8は安いね。

でも、読んでいるうちに、だんだんと怒りも覚えるようになった。世の中の色んな制度・仕組み・人間が投資家のお金を騙し取ろう(言い方は悪いけど実質的には同じ)としているか、仮にそうでなくとも、世の中の制度がいかに、金融・投資の世界で働く人にとって、投資家の利益に沿うよう働くのを難しくしているか、考えさせられた。

これから先、欧米に習って、日本でもどんどん確定拠出年金制度が普及するでしょう。そうなったときに、普通に毎日地道に働いて定年を待っている人たちの年金が正しく運用されていけるのか。間違った経営・監査・投資がどれだけ深刻な経済的・社会的損害をもたらすか。同じ1000億円でも、裕福な人1人の貯金でなく、普通の人1000人の年金なら社会的な被害はもっと大きくなるでしょう。

世の中、特に金融市場を取り巻く環境がどれほど信用がおけないものかをも考えさせられた。

会計上の数値が色んな恣意的な仮定・ルールの上に成り立っているという事実に併せて、それを評価する公認会計士や年金数理士のインセンティブが最終的な利益とリスクの受け手である投資家のそれと違っているいう事実。その二つが合わさっている今の環境の中で、どれだけそういう人たちの言っていることが信用できるのか。。。だけれども、全部が信用できないとなれば投資家はプロの機関投資家でも意思決定ができない。それほどまでに市場・会社分析は複雑。。。どこでバランスを取ったらいいのか。

似たような例がここ2年間で起きた+起きている。銀行が自身が作ったローンを保有・監督したり、債務者を律したりするビジネスから、ローンを売却するビジネスへとシフトしていったのにつれて、ローンの質が悪くなり、最終的に債務者、銀行が苦境に陥った。かつては、債務者の問題はそれに貸した銀行の問題でもあった(同じインセンティブを持っていた)けど、派生商品の発展によって、そのコネクションが絶たれた。銀行の問題は、ローンを審査したりその後のモニタリングをしたりすることではなく、いかに多くのローンを作ってそれを投資銀行に売るか、に変わってしまった(債務者とは違うインセンティブを持つようになった)

話を戻して、個人的には、これから先、上に挙げたインセンティブの仕組みを変えること、つまりクライアントである事業会社から投資家へと、公認会計士や年金数理士の報酬の出し手を変えることが必要になるんじゃないかなぁ。。。でも、そうなると当然フリーライダーの問題も上がるでしょう。とても難しい問題ですよね。

今の環境で本当に正しい(と思える)判断をするためには、判断に根拠となる数字を取り巻く環境にどのようなルールがあるのか、そのルールを破る方法がどれだけあるのか、今までどんな違反のケースがあったのかを理解しないとダメでしょうね。
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by a_villager | 2008-07-27 07:27 | 投資

When markets collide


When Markets Collide: Investment Strategies for the Age of Global Economic Change
Mohamed El-erian / / Mcgraw-Hill
ISBN : 0071592814
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大手債券投資会社PIMCOの共同最高投資責任者が書いた、ここ10年で変化した市場に対してどのような投資戦略を立てたらいいかについて述べた本。併せて、このサブプライム危機、続く信用収縮についても述べている。

債券投資会社のボスだけあって、グローバルマクロ経済について多くの文面を割いている。それにプラスして、投資家心理についてもいろいろと書いている。

他の本でも読んで知っていた内容が多かったけど、それだけ重複して色んなところで書いている点からも、それらの重要性を再確認。

ざっぱりとブックマークした箇所をピックアップ

・市場に現れるノイズがその後に起こる大きな変化を示している場合が度々あるが、人はそれらのノイズを心理的に無視しようとする。(p.5)

・リスクプレミアム(金利)が下がると、投資家は低いリターンには耐えられず、高いリターンを求めてどんどんとレバレッジ(借金)を増やしたがる。それによって増えた投資によって資産のリターンは下がって、さらにレバレッジを加速させる。(p.21)

・ITバブル後のアメリカ金融市場を見ると、長期国債の利回りと、株式指数は逆相関の関係を示している。つまり、長期金利が下がるに併せて、株価は上がってきた。(p.36)

・多くの金融機関が今まで貸借対照表の外においてきた特別投資会社(SIV)を、一番悪いタイミング(市場が弱いとき)に貸借対照表に載せる方向に向かっている。(p.49)

・今度こそは違うだろう(例えば、今度こそは株価は天井知らずに上がるだろう、ネットによって今までの経済法則は覆されるだろう)、と考えるのは危険。(p.64)

・人は目に見えるものを、整然と構築されていて、理解可能なものだと捉える傾向がある。(p.79)

・投資家には、損切りをしたがらない、という傾向がある。(p.83)

・markets can remain irrational longer than you can remain solvent (by Keynes) (p.96)

・銀行が資産を保有するビジネスから資産を形成して売却するビジネスにシフトした結果、銀行が本来果たして役割(due diligence、 monitoring、taking illiquidity)が機能しなくなって、それが今のサブプライム問題、信用収縮に寄与した。(p.145)

他にもいろいろと面白かった点・勉強になった点があった。今後読み返す機会もあるでしょう。今の金融危機は、とても高い授業料になるけど、非常に貴重な勉強の機会でもあると思う。


会社勤めを始めて、マンハッタンとロンドンと出張扱いで来て気が付いたけど、自分はあまり贅沢をしたがらない人かもしれない。子供のころ、大学院時代の習慣が身についているからかもしれないし、仕事を始めてからまだ十分時間が経っていないからなのかもしれないけど。

贅沢な時計や服、贅沢な遊びには全然興味ないし、食事も基本的に美味しければ値段にはあまり気にしない(高価な店にはあまり入りたくない)。会社がカバーするといわれても、無意味に高価な店に入ろうとも思わない。

そんなことよりも、公園でもオープン・カフェでも面白い本を読みながらコーヒー飲んでるほうがutilityが高い気がする。お金のinとoutが合っていないかもしれないけど。傍から見たらどう思われるかはわからないけど、でもそういう子供のころから身についた質素な部分は残しておきたい。

しっかし、ロンドンは物が高い。。。
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by a_villager | 2008-07-25 03:20 | 投資