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初めての方は、このブログについて、をご覧ください。金融業界で働いています。毎日の気になった情報・ニュース・考えを載せていきます。友人・知人の皆さん、コメントの際にはハンドルネームで呼んでくださいー。


by a_villager

Fallen Angel


直訳すると堕天使だけど、金融の世界ではかつては高格付けにあったけど、今では経営難から低格付けに落ちてしまった社債のことを指す場合がある。GMとかFordとかが典型的な例。でも今日のは、かつては持てはやされて崇拝されていた有名投資家の話。

水曜日に控える資格試験の勉強の合間に気分転換に興味ある記事を読んでいた。(これで気分転換になるなんて病んでる、っていう突っ込みは置いといて)



大手投資会社Legg Masonのポートフォリオ・マネージャー、Bill Millerはかつて2005年まで15年連続でS&P500指数を上回る運用成績をたたき出したが、この金融危機の煽りを受けて、過去の運用成績を吹き飛ばすほどの損失を出して、今窮地に陥っているという。

Humbler, After a Streak of Magic
Published: May 11, 2008, New York Times


Is Bill Miller’s Star Waning?
July 24, 2008, 7:48 am, New York Times



そのパフォーマンスの低迷の原因としては、金融危機の規模の大きさ・深刻さを読み間違えて、表面上安くなった金融・住宅関連の株に大きな投資をしたことが挙げらている。また、ファンド規模も大きくなりすぎて、機敏な調整がしにくくなり、ファンドの大きさに見合う投資先を見つけるのが難しくなったことも考えられると。

その結果、2008年の7月までのパフォーマンスはマイナス30.86%と、S&P500 Indexのマイナス13.20%を大きく下回った。さらに衝撃的なのが、2008年5月から2ヶ月間の下げで過去10年に及ぶS&Pに勝ってきた貯金を全部吹き飛ばすほどの損失を出したと。それによって、5月には同種ファンドの中で37位にあった運用成績が56位まで落ちてしまった。対インデックス、対同種ファンド、など相対評価が非常に重要な運用業界で、この下げは非常に厳しい。。。

上にあげた1つ目のNYTのインタビューで、興味深い点を2つほど見つけたので以下に転載。

1つ目。

For example, Legg Mason began buying Countrywide in 2004, when the stock was in the $20s. “We said: O.K., the Fed is raising interest rates. That is bad for housing,” he recalled. “We studied housing stocks in other countries. We looked at the U.K. experience, the Scandinavian experience, places where governments had raised interest rates. And the answer was that stocks underperformed for about a year and then outperformed.”

What Mr. Miller missed, he acknowledges, was that lending standards had become much more relaxed in the United States than they were in other countries. As for Bear Stearns, he views its demise as a classic run on the bank. While some investors consider Wall Street firms to be inscrutable black boxes, Mr. Miller takes a wider view.

“To a certain extent almost every company is a black box,” he says. “How many people know what is going on inside General Electric? As of March 14, Jeffrey Immelt did not even know what was going on,” he adds, referring to a Webcast in which Mr. Immelt, G.E.’s chief executive, was optimistic about the company’s performance a month before it reported disappointing quarterly earnings.


表面上からは過去と同じように見える企業体も、今や金融技術の進化・普及によって全く異質なものになっている。色んなアグレッシブな会計手法、数字に表れない質的な劣化、デリバティブの適用によって、企業を理解・分析するのが難しくなった。企業の経営者でさえ、企業の中で何が起こっているのか、それが結果的に会計上の数字としてどのように現れるのか、理解するのが難しくなった。

2つ目。

But on occasion, Mr. Miller has been slow to recognize that management problems may trump valuations. “That tends to be a weakness of mine,” he concedes. “I tend to believe the numbers and I tend to give management the benefit of the doubt.”


企業の経営陣によって作られた会計上の数字がどこまで信じられるか。経営陣の善意にどこまで頼っていいのか。偶然にも、僕が数週間前に受けた授業、読んだ本と重なる部分があって驚いた。

個人的には、Bill Millerにはここで踏ん張って挽回してほしい。今までのスタイルを変えたり、引退したりするのは見たくないなー。まだ60歳前だし、まだまだファンドを立て直す時間もエネルギーもあると思うから。山あり谷ありの商売だし、谷底から這い上がってくるのを将来の手本として見せて欲しい。
by a_villager | 2008-08-10 03:36 | 投資