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by a_villager

The Number

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Alex Berenson / / Simon & Schuster Ltd
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投資・金融の世界がどれほどまでに一つの数字、EPS(一株あたり純利益)に危険なまでに過剰に注目しているか、今までの歴史の中で投資家を取り巻く環境がどれほどまでに投資家にとって好ましくないものだったか、過去の会計操作にはどういうケースがあったのかを書いている。

先週に授業を受けて、その昼休みに立ち寄った本屋で買って今日読んだけど(体調が回復しておらず遠出ができなかった;)、とても面白かった。この内容で£8は安いね。

でも、読んでいるうちに、だんだんと怒りも覚えるようになった。世の中の色んな制度・仕組み・人間が投資家のお金を騙し取ろう(言い方は悪いけど実質的には同じ)としているか、仮にそうでなくとも、世の中の制度がいかに、金融・投資の世界で働く人にとって、投資家の利益に沿うよう働くのを難しくしているか、考えさせられた。

これから先、欧米に習って、日本でもどんどん確定拠出年金制度が普及するでしょう。そうなったときに、普通に毎日地道に働いて定年を待っている人たちの年金が正しく運用されていけるのか。間違った経営・監査・投資がどれだけ深刻な経済的・社会的損害をもたらすか。同じ1000億円でも、裕福な人1人の貯金でなく、普通の人1000人の年金なら社会的な被害はもっと大きくなるでしょう。

世の中、特に金融市場を取り巻く環境がどれほど信用がおけないものかをも考えさせられた。

会計上の数値が色んな恣意的な仮定・ルールの上に成り立っているという事実に併せて、それを評価する公認会計士や年金数理士のインセンティブが最終的な利益とリスクの受け手である投資家のそれと違っているいう事実。その二つが合わさっている今の環境の中で、どれだけそういう人たちの言っていることが信用できるのか。。。だけれども、全部が信用できないとなれば投資家はプロの機関投資家でも意思決定ができない。それほどまでに市場・会社分析は複雑。。。どこでバランスを取ったらいいのか。

似たような例がここ2年間で起きた+起きている。銀行が自身が作ったローンを保有・監督したり、債務者を律したりするビジネスから、ローンを売却するビジネスへとシフトしていったのにつれて、ローンの質が悪くなり、最終的に債務者、銀行が苦境に陥った。かつては、債務者の問題はそれに貸した銀行の問題でもあった(同じインセンティブを持っていた)けど、派生商品の発展によって、そのコネクションが絶たれた。銀行の問題は、ローンを審査したりその後のモニタリングをしたりすることではなく、いかに多くのローンを作ってそれを投資銀行に売るか、に変わってしまった(債務者とは違うインセンティブを持つようになった)

話を戻して、個人的には、これから先、上に挙げたインセンティブの仕組みを変えること、つまりクライアントである事業会社から投資家へと、公認会計士や年金数理士の報酬の出し手を変えることが必要になるんじゃないかなぁ。。。でも、そうなると当然フリーライダーの問題も上がるでしょう。とても難しい問題ですよね。

今の環境で本当に正しい(と思える)判断をするためには、判断に根拠となる数字を取り巻く環境にどのようなルールがあるのか、そのルールを破る方法がどれだけあるのか、今までどんな違反のケースがあったのかを理解しないとダメでしょうね。
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by a_villager | 2008-07-27 07:27 | 投資