先週、FTのMartin Wolfが面白い分析記事を書いてた。
Asia's revenge
By Martin Wolf
FT
Published: October 9 2008 03:00 | Last updated: October 9 2008 03:00
アジア金融危機後にアジアや中東、ラテンアメリカの発展途上国は、国内での投資よりも多くの貯蓄を積み上げ、対外収支の債務国から債権国へと変化し、その大部分、およそ2/3をUSドルで持つようになった。それによって、国際通貨市場で自国通貨売り、USドルの買いを行うので、さらに自国の輸出業が対アメリカで強くなり、その傾向に拍車をかけるようになった。
またドットコム・バブル後にアメリカ企業は投資よりも貯蓄を多く溜め込むようになり、銀行などからではなく非金融業からの金融が多くなった。その一方で中央銀行は海外からの資金流入によるドル高基調や、自国企業の投資意欲の低下を考慮して、金融緩和策を続けざるを得なかった。
それらを背景として、アメリカを初めとする先進国は金融セクターと家計が安価な資金、緩い金融政策を頼りに課題な負債を積み上げ、特に家計は過大な消費を行うようになり、住宅バブルを膨らませた。
新聞やテレビの安いコメントではアメリカでは、銀行が悪者で一般国民が犠牲者となっているが、そもそも過大な債務を積み上げ、本来手を出すべきでない住宅を買って、楽な生活を享受したのはアメリカの一般国民。根本にあるのが住宅価格の下落で、これに付随して、それらを組み込んだ派生商品で金融機関のバランスシードがやられていることを考えると、この金融危機はWallstreetだけの問題ではなく、少なくない部分がMainstreetの問題ともいえる。過去の待遇の差を見て、銀行だけに責任を押し付けようとするアメリカ議会の皆さんもどうかと。。。銀行員だけでなく、自分たちの選挙民もバブルで騒いで楽しんだはずなのに。
アメリカが震源で、アジアはその犠牲となったという考え方もちょっとオカシイ。そもそもアジアを初めとする発展途上国(+日本)が自国での投資をせずに、わんさかアメリカ国債を始めとしてUSドル資産にお金をつぎ込んで、その一方で自国通貨を安く抑えてきたから、クレジットの膨張、住宅バブルが生じた。
この金融危機には、世界の、発展途上国(エマージング経済といったほうがいいかも)を含めた主要国が関与しているし、政府、家計、企業の全セクターが関与している。
1つの家計、1つの企業、1つの国で見れば、全体として貯蓄が多い、投資が多い、という現象はありえるけど、全世界で見れば、どこかが貯蓄していたら、どこかが投資を担わないといけない。過去10年、投資の役割を発展途上国+日本、投資の役割をアメリカ+欧州が担ってきた。
その流れがあまりにも長く、過度に続いたために、投資を担ってきた国でバブルが生じた。
これを単に、銀行が悪い、アメリカが震源地って言う風に断言できるのかなと思う。自国の資本市場を改革しないで海外からの投資を拒んできた国も、このバブル、金融危機の原因の1つだと思うような。。。
じゃ、これからアメリカの債務国、投資先としての役割を段々失っていくとすると、それを今まで債権国だった日本、他の発展途上国が担えるか?通貨の需給がそれにあわせて調整されていったときに、それらの企業セクターは対応できるか。海外からの資金を適切な場所に受け入れるだけの規制制度の改革が出来ているか。いろいろ、考えさせられますね。
今のジェットコースター相場を越えて、いろいろと考えなければいけない課題ですね。
#
by a_villager
| 2008-10-14 09:47
| 経済